ゲノムDNAの簡易抽出法と品質評価

  • 山口 良考 国際医療福祉大学
  • 藤井 樹
  • 中村 蓮
  • 岩淵 由起
  • 渡辺 雄大
  • 飯塚 信義
  • 山口 孝一
  • 伊藤 記彦
  • 片山 博徳
キーワード: ゲノムDNA, 簡易抽出法, 品質評価

要旨

 近年、遺伝子の病原性変異(病原性多型)が、疾患を診断できる検査項目となってきており、病理学や血液学検査などにおいても、疾患関連遺伝子を対象とした検査(遺伝学的検査、体細胞遺伝子検査など)で必要不可欠の項目となっている。がんゲノム医療においては、患者検体からのゲノムDNA が検査対象となり、その抽出/精製が必要不可欠の技法となっている。多くの場合、市販されているキットを用いてゲノムDNA が抽出・精製されているが、本研究では生活汎用品を用いて安全かつ安価にゲノムDNA を抽出する簡易抽出法(食塩法)を確立検討し、市販のキットで抽出したゲノムDNA との品質を比較した。市販のキットの抽出操作には、高速遠心機や専用のカラムや試薬を用いるのに対し、食塩法ではそれらを必要とせず、生活汎用品である中性洗剤や調理
用食塩を用いてDNA を抽出することができる。
 DNA 抽出キットと比較して、食塩法により得られたゲノムDNA の収量は1.7 倍多く、電気泳動と制限酵素消化による結果より、本法で抽出したゲノムDNA はインタクトに近い状態であった。また1サンプルあたりの費用においても、安価に抽出できる。本法によるゲノムDNA 抽出は、同時に多くの検体を扱うことは難しいが、食塩法に用いる試薬は日常生活の汎用品であり、入手が容易であるため、教育分野や試薬・キットを消費してしまったなどの緊急時において活用できる手技である。

出版済
2022-02-03
セクション
報告論文