地域で生活する統合失調症者の身体活動量とリカバリーとの関連
要旨
本研究の目的は,地域で生活する統合失調症当事者の身体活動量とリカバリーとの関連について明らかにすることである。
地域で生活する統合失調症当事者に無記名自記式質問紙調査を実施し,88名を分析対象とした。調査項目は,対象者の背景項目,国際標準化身体活動質問票(IPAQ),24項目版 Recovery Assessment Scale 日本語版(RAS)とした。
本研究対象者のRAS合計得点±SDは,82.3±15.1点,総身体活動量の平均値(中央値)は,1125.5(705.0)METs・分であった。RASとの関連をSpearmanの順位相関係数およびMann–WhitneyのU検定により確認した。さらに,RAS合計得点を従属変数,各生活場面における身体活動量を説明変数として重回帰分析(Stepwise法)を行った。その結果,RAS合計得点および全ての下位尺度と総身体活動量に関連がみられた。また,現在,運動に取り組んでいる人は,取り組んでいない人と比べてRAS合計得点が有意に高かった(p<0.001)。RAS合計得点と各生活場面における身体活動量との関連では,【余暇時間の総身体活動量】,【仕事中の総身体活動量】,【家事に関する総身体活動量】がリカバリーに有意な影響力を持つ変数として採択され, 自由度調整済みR2は0.289であった。
統合失調症当事者のリカバリー促進には,日々の身体活動量増加へのアプローチや適度な運動を取り入れた介入の必要性が示唆された。