院内助産の現状とその課題

  • 松下 有希子 さぬき市民病院
  • 十河 美智子 Sanuki Municipal Hospital
  • 西原 加奈恵 Sanuki Municipal Hospital
キーワード: 院内助産, 女性を中心にしたケア, チーム助産

要旨

 現代の日本社会では,助産師に,正常妊産婦を対象とした助産ケアの提供だけではなく,ハイリスク妊産婦に対する助産ケアや産後のメンタルヘルスの不調をきたした女性に対する産後ケアと育児期における支援も含めた対応が求められている.そのような現状のなか,院内助産を稼働させている施設が増加しつつある.本論では,院内助産を実践している一施設の状況を報告し,より質の高い院内助産実践に向け,現状の課題の整理を試みた.  2021年から院内助産システムを開始しているさぬき市民病院では,産科混合病棟にて,院内助産を運用している. 質の高い助産ケアの提供を目指し,院内助産に携わる助産師13名のうち8名がアドバンス助産師である.本院における院内助産では,女性が,分娩台を利用せず,畳の上に敷かれた布団の上で分娩することを選択できるようにしている.分娩室では,女性が希望通りに過ごすことができ,体位の拘束もない.お産をする女性が主役であり,私たち助産師は,その女性のお産を演出するわき役としてケアを行っている.これらの助産ケアは,女性を中心としたケアモデルを中核にすえ,助産師主導の継続助産モデルを活用した実践である.このような実践の結果,本院における院内助産システムは,女性の望むお産を実現するだけでなく,働く助産師の職務満足度を高められることに効果があることがわかった.しかし,今後,助産ケアを提供する助産師をどのように育成していくか,助産ケアモデルの臨床への応用の在り方,多職種連携など取り組むべき喫緊の課題が浮き彫りになった.

出版済
2024-02-15
セクション
報告論文