僧帽弁形成術前後における左室内腔渦流評価
要旨
心臓弁膜症の診断や術後評価において心エコー図検査は必要不可欠である.近年, 大槻らにより開発されたEcho-Dynamography(EDG)法をもとにしたVector Flow Mapping (VFM) より,左室内腔の複雑な流れが表示可能となり,左室内腔の血流が渦流を形成していることが明らかとなった.VFMで僧帽弁形成術(Mitral Valve Plasty : MVP)前後例の左室内腔の渦流について評価し,VFMが新たな心機能評価の指標に役立つか検討した.健常者23例とMVP前後17例を対象に,左室内腔の渦流について観察し,さらに渦流の最大渦流量(cm2/sec),最大半値面積(cm2),最大渦強度(1/sec)について比較検討した.健常者とMVP前後例に観察された主な渦流は拡張期であった.健常者の最大渦流量は28.5±11(cm2/sec),最大半値面積は2.2±1.2(cm2),最大渦強度は15±7(1/sec)だった.MVP前後例の最大渦流量は66±20(cm2/sec)から39±20(cm2/sec)へ,最大半値面積は4.0±2.0(cm2)から2.5±1.5(cm2)へと有意(p<0.01)に縮小し,左室拡張末期容積と有意な正の相関を示した.最大渦強度の低下は認められなかった.VFMは,左室内腔の渦流を観察することを可能にし,MVP前後の心機能評価の指標になりうることが示された.