馬の結腸変位疝罹患例の血中菌体内毒素濃度と転帰について:遡及的分析記録

  • Midori Goto Asakawa
  • Wasiq Mehmood
  • Mohammad Ali
  • Masa-aki Oikawa
キーワード: 馬, 変位疝, 菌体内毒血症, 血中菌体内毒素濃度測定, 予後, 転帰

要旨

馬の変位疝は菌体内毒血症 (ET)を誘発し、致死的経過を招きやすい病態である。疝痛罹患馬の血中菌体内毒素濃度測定は、従前から早期診断指標としての意義を探る目的で種々試みられてきたが、測定に要する操作の複雑さ等により、未だ実験室レベルの検査法の域にとどまっている。近年、ETは菌体内毒素による直接的組織傷害の結果としての病ではなく、毒素に誘発されて起こる全身性炎症反応症候群(SIRS)の病態として認識されるに至ったことから、血圧や心拍数などの生体由来のデータ、或は、血中タンパクの分子バイオマーカーの探索からSIRSの病態を把握する方向へ研究が展開している。しかしながら著者らは、2000年代初頭に、市販のET診断キットを用いて測定した馬のデータの中から、結腸変位疝罹患馬の初診時の血中菌体内毒素濃度と結腸変位整復術後3日間の転帰の関係のデータを遡及的に再度分析したところ、初診時における血中菌体内毒素濃度と馬の転帰の関連性を示唆する成績が得られた。この結果の解釈には慎重を要するものの、血液中への当該毒素の曝露の量的程度の差がET罹患馬の予後に影響する可能性が示唆された。

出版済
2022-11-16
セクション
短報