下腿切断術後の皮膚状態により下腿義足の作成が遅延した症例

―歩行能力獲得のためにコメディカルでアプローチをした症例―

  • 小川 祐来
  • 平野 恵健 日本医療科学大学
  • 大森 まいこ
  • 高橋 航世
  • 今村 健太郎
キーワード: 下肢切断, 義肢装具, 回復期リハビリテーション病棟

要旨

 両下腿をキャタピラーに轢かれ受傷し、右観血的固定術と左下腿切断術を施行した後に採皮部や断端部の上皮化が遅延していた症例(男性44歳)に対し、自宅復帰に向けたリハビリテーション(以下:リハ)を行った。採皮部や左断端部の状態から下腿義足の作製は難渋すると考えられたため、入院期間中は松葉杖での移動能力獲得を検討していた。しかし、ご本人の義足作製(歩行)の希望や退院後の生活環境を考えて、左断端部の状況に応じては義足作製を行うことができるように、入院期間中に担当療法士、主治医、看護師が密に連携し、定期的に採皮部や左断端部の状態を確認しながら、歩行能力獲得に向けたリハの提供を機能や能力に合わせて段階的に行った。その結果、採皮部や左断端部の上皮化を認めたため仮義足作製可能となり、歩行能力の獲得や活動範囲の拡大が得られ、自宅復帰が可能となった。以上のことから、採皮部や断端部の皮膚の状態が悪くても多職種が連携し、症例の状態に合わせた段階的なリハプログラムを実施することは、仮義足の作製後に歩行能力獲得が期待でき、加えて、退院後の安全な生活の獲得と活動範囲の拡大につながる可能性があると考えた。

著者略歴

平野 恵健, 日本医療科学大学

職位:准教授  

学位:博士(理学療法学)首都大学東京大学院 人間健康科学研究科

資格:理学療法士 ・ドイツ徒手医学認定セラピスト ・3学会合同呼吸療法認定士

専門分野:整形外科学、義肢装具学

研究テーマ: 理学療法学における臨床研究

 

業績:

  1. Yoshitake Hirano, et al: Development of a prognostic scale for severely hemiplegic stroke patients in a rehabilitation hospital. Clin Neurol Neurosurg. 2017;158(7):108-113.
  2.  Yoshitake Hirano, et al: Prediction of Independent Walking Ability for Severely Hemiplegic Stroke Patients at Discharge from a Rehabilitation Hospital. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2016 ;25(8):1878-1881.
  3.  Yoshitake Hirano, et al:Prognosis and classification of severely hemiplegic stroke patients in a rehabilitation hospital. J Phys Med Rehabil 2017, 5: 397(DOI 10.4172/2329-9096.1000397). 
  4. Yoshitake Hirano, et al: The effect of voluntary training with family participation on early home discharge in patients with severe stroke at a convalescent rehabilitation ward. Eur Neurol. 2012;68(4):221-228.

 

他37編、Proceedings 4編、学会発表(国内・国外)117本

 

競合研究費の採択

公益財団法人 ひと・健康・未来研究財団 医学研究助成金(2015)

公益財団法人 大同生命厚生事業団 地域保健福祉研究助成金(2011)

 

受賞:第59回日本循環代謝学会学術集会 優秀ポスター賞(2016)

 

出版済
2022-02-03
セクション
報告論文