下腿切断術後の皮膚状態により下腿義足の作成が遅延した症例
―歩行能力獲得のためにコメディカルでアプローチをした症例―
キーワード:
下肢切断, 義肢装具, 回復期リハビリテーション病棟
要旨
両下腿をキャタピラーに轢かれ受傷し、右観血的固定術と左下腿切断術を施行した後に採皮部や断端部の上皮化が遅延していた症例(男性44歳)に対し、自宅復帰に向けたリハビリテーション(以下:リハ)を行った。採皮部や左断端部の状態から下腿義足の作製は難渋すると考えられたため、入院期間中は松葉杖での移動能力獲得を検討していた。しかし、ご本人の義足作製(歩行)の希望や退院後の生活環境を考えて、左断端部の状況に応じては義足作製を行うことができるように、入院期間中に担当療法士、主治医、看護師が密に連携し、定期的に採皮部や左断端部の状態を確認しながら、歩行能力獲得に向けたリハの提供を機能や能力に合わせて段階的に行った。その結果、採皮部や左断端部の上皮化を認めたため仮義足作製可能となり、歩行能力の獲得や活動範囲の拡大が得られ、自宅復帰が可能となった。以上のことから、採皮部や断端部の皮膚の状態が悪くても多職種が連携し、症例の状態に合わせた段階的なリハプログラムを実施することは、仮義足の作製後に歩行能力獲得が期待でき、加えて、退院後の安全な生活の獲得と活動範囲の拡大につながる可能性があると考えた。