A大学のハンドドライヤーにおけるMRSAの実態調査

  • 武井 泰 山梨県立大学
  • 西城 采美
キーワード: ハンドドライヤー, 薬剤耐性菌, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

要旨

ハンドドライヤー(HD)の効果についてはこれまでにいくつかの研究結果が報告されている。また、HDは医療関連施設などのトイレ内に設置が普及している。一方、HD内に付着している水滴などからはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されているという報告もある。そこでA大学に設置されているHD内のMRSAについての細菌汚染の実態を明らかにするため、HDの水受け部分を調査し検討した。調査日は2013年、2014年の各々8月に行い採取箇所は5階建ての各階のトイレに設置された全15台のHDの水受け部分の1箇所から採取した。総菌数の計数はHI培地、黄色ブドウ球菌の同定には卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて卵黄反応およびグラム染色による形態の確認、コアグラーゼ試験を実施した。薬剤感受性試験は同定された菌株についてMPIPC、CLDM、FOM、NFLX、MINOを用いた。結果として2013年ではMRSAは検出されなかったが多剤耐性菌は検出された。また2014年はHDからMRSAが検出され多剤耐性菌も検出された。各年に共通して検出されたブドウ球菌の耐性薬剤はCLDM、FOM、NFLXであった。調査からMRSAや多剤耐性菌の存在が認められ、HDの水受け部分へ接触することにより手指を介した耐性菌が伝播する可能性が推測された。しかし検討した機種は紫外線殺菌灯がなく今後は機種の変更や機種による留意点などの注意勧告の掲示を含め新型コロナウイルス(COVID-19)飛散防止機能を備えた対策の検討を行い安全・安心して使用することの方策が必要と思われる。

出版済
2021-10-15
セクション
原著論文