新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染対策としての抗体検査の有用性の検討
要旨
ある精神病院にて、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染症対策の一環として、2020年5月21日から7月10日までの51日の間、職員63検体、患者11検体、延べ74名のSARS-CoV-2抗体検査を施行した。職員64検体(63名、1名は抗体陽性者の妻)、患者13検体(2回が2名あり)において、抗体検査の陽性者は、職員11名(全体の14%で、うちIgM+IgG の者が3名)であった。IgGのみ陽性の者は0名だった。検査結果の陽性者の住居地を地図に書き込んでみると、SARS-CoV-2は、人々の流れに乗る事、人の集う場所と重なること等が可視化された。以上の結果から、抗体検査の時期や、患者と接触が必要な外部からの非常勤職員(歯科医師、作業療法研修生、理美容師等)に対しても、持継続的な抗体検査を行うなどが理解され、SARS-CoV-2感染対策マニュアル作成上、重要な知見を得た。また、本院にて抗体検査陰性を確認後、近隣の専門病院に救急搬送した発熱患者の例では、現地で直ちにPCRによる抗原検査後、陰性にて入棟、2日後のPCR検査結果でも陰性ではあったが、この際の搬送に関わる救急隊員、加療に携わる先方医療機関への陰性証明の一助として、抗体検査が有用な情報となりうる可能性を示せた。抗体検査が、陰性証明を得るための一手段になり得ると考えられるが、今後、PCR検査、抗原検査等の結果をさらに追加して、その有用性の検証を行う必要がある。さらに、毎日の県境を越えての通勤に、その都度PCR検査を行うことは無理があるので、「陰性証明」のためにも抗体検査の役割は大きいと考えられる。