重症心身障害のある子どもの苦痛に関する母親と訪問看護師の理解と共有

  • Tomomi Sato 横浜市立大学医学部看護学科
  • Naoko Machida 横浜労災病院
  • Kaori Hayama なごみ訪問看護ステーション
キーワード: 重症心身障害児、訪問看護師、母親、苦痛、共有

要旨

【目的】母親と訪問看護師が、重症心身障害のある子どもの苦痛をどのように捉え、共有しているかを明らかにする。
【方法】ケーススタディ法を用いた。研究参加者は1 ケースの子どもの母親と担当訪問看護師2 名であり、子どもの苦痛をどのように捉えているか、捉えた苦痛を母親と看護師がどのように共有しているかについて、半構造化面接を行った。
【結果】子どもの苦痛に対する理解について、母親のインタビューから「母親は、反応のタイミングと大きさから子どもの苦痛の主張を把握する」「母親は、子どものいつもと違う様子から苦痛を把握する」「母親は、同一処置のケアに対する子どもの反応の違いから、痛みと怒りの差を把握する」「子どもの感情の読み取りに確証がもてない」が明らかになった。訪問看護師の子どもの苦痛に対する理解については、「訪問看護師は訪問時に触れた感
覚と最近の様子を比較して苦痛を把握する」「訪問看護師は訪問時のケアと過去のケアに対する子どもの反応の相違から苦痛を把握する」「訪問看護師は子どもの感情の判断に確証が持てないため、母親の判断を尊重する」が示された。また、母親と訪問看護師のインタビューから、それぞれが捉えた子どもの苦痛に関して共有し理解を進める場面があることが示された。その共有場面とは、「母親は、専門職と一緒に子どもの苦痛の原因を特定し、よりよいケアを追求する」「訪問看護師は、子どもの感情を確実に判断できないため、母親の判断を優先する」「訪問看護師は、把握した子どもの苦痛を母親と共有しながらケアにつなげる」であった。
【考察】訪問看護師が短時間の訪問の中で子どもの苦痛を捉えるためには、普段から子どもの様子を良く知っている母親が捉えた「子どもの苦痛に関する情報」を知ることの必要性が示された。また、母親と看護師双方に「子どもの感情の判断に確証が持てない」との結果から、訪問看護では母親と「一緒に苦痛に関する判断を確かめること」が重要であると考えられた。
本調査は平成27‒30 年度文部科学省科学研究費助成金(C)を受けて実施した。また、本研究の一部を第3回国際ケアリング学会で発表した。

出版済
2019-12-16
セクション
原著論文