心拍変動解析による高年者のプール入水時の自律神経活動の変化
要旨
【目的】中高年にとって水中運動は関節に負担をかけず運動でき,筋力強化や血圧が低下するなどの効果が報告されている。一方,入水による心血管系への自律神経応答は若年者と異なり,運動中の不整脈発生のリスクも報告されている。そこで,中高年者の自律神経活動が急激に変化すると考えられるプール入水後5分間の立位安静のうち最初と最後の1分を除いた3分間の,短期的な自律神経活動の変化を明らかにすることを目的とした【対象・方法】55歳以上の中高年者24名(男性8名,女性16名)を対象に,入水前と入水後における安静時の自律神経活動を心拍変動解析により解析し,検討した。【結果】入水後の女性の副交感神経の指標となるトータルパワー(TP)に対する高周波成分(HF)の割合(HF/TP)は有意に減少していた。交感神経の指標である高周波成分(HF)と低周波成分(LF)の比(LF/HF)は,入水後において男性が女性より有意に高かった。年齢と各指標との関連では,入水前にはLF/HFが女性において有意な負の相関を認めたが,他の指標では有意な差は認めなかった。【結論】中高年者の入水前から水中の自律神経活動は,女性では,入水前から入水後の変化で副交感神経活動は抑制されること,水中では男性の交感神経活動が女性より高いこと。年齢との関連では入水前のLH/HFにおいて,女性では年齢とともに低下していくことが明らかとなった。