カナダガンとエジプトガンの舌の走査型電子顕微鏡による観察

  • 江村 正一
キーワード: カナダガン、エジプトガン、舌、SEM

要旨

カナダガン(Branta canadensis)とエジプトガン(Alopochen aegyptiacus)の舌表面とその結合織芯を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。肉眼所見では、カナダガン、エジプトガンともに舌尖はヘラ状を呈し、舌体の後端は大型の円錐乳頭になった。舌尖および舌体には正中溝が、舌の中央部分には隆起部が観察され、その先端はカナダガンではエジプトガンに比べ膨らんでいた。カナダガンではエジプトガンに比べ隆起部の先端からやや外側前方に向かう稜線がより明瞭であった。カナダガンでは舌体前方の両外側に針状構造物が、エジプトガンでは毛状構造物が存在し、舌体中央の両外側にはカナダガン、エジプトガンともにノコギリ状構造物が観察された。走査型電子顕微鏡による観察では、カナダガン、エジプトガンともに舌尖の表面には突起は無いが上皮層の隆起が見られた。カナダガンにおける舌体前方の両外側の針状構造物は、太い大型の突起と細い糸状の突起から構成されていた。エジプトガンにおける毛状構造物は、細い糸状の突起のみから構成されていた。カナダガン、エジプトガンともに見られた舌体中央の両外側におけるノコギリ状構造物は、巨大な円錐状の突起と多数の細い副突起から構成されていた。それらの巨大な円錐状の突起の上皮を剥離すると、三角形をした結合織芯が見られ、その表面をさらに拡大すると網目状の構造が出現し、所々糸状に隆起した結合組織が観察された。カナダガン、エジプトガンともに舌体中央および後方の両外側に多数の分泌腺の開口部が観察された。これらの所見はカナダガン、エジプトガンの舌表面の構造がカルガモの舌に類似することを示唆するものである。

出版済
2018-10-14
セクション
原著論文