時間遅れ座標を用いた自殺死亡率の変動(1998 - 2007)とその解析
要旨
人口動態統計によると、わが国の自殺者は年間3万人を超えており、その対策が急がれている。10 万人あたりの自殺死亡者数(自殺死亡率)を年齢性別にみると若年者のそれは増加傾向にあるのに対して高齢者では男女とも減少傾向を認める。しかし、このような変化は時系列に並べてみると、非線形な挙動が含まれており、直線回帰としてその傾向を解析することは難しい。本研究では、人口動態統計をもとに都内在住の65 歳から85 歳までの男女についてのデータを1998(平成10)年から2007(平成19)年まで調査し、時間遅れ座標を用いて解析した結果、一部の年齢群では2000(平成12)年を境に、自殺者数の減少を認めた。2000(平成12)年を境とする自殺者数の改善には、各種施策の関与が推測された。特に介護保険の開始が一部関与しているとする先行研究も見られるが、本研究の結果からも、健康日本21 も含め各種施策の開始との関連にお
いて更なる 検討が必要と思われた。