トラツグミ、ハイタカ、オナガガモ、チュウサギの舌表面の走査型電子顕微鏡による観察
要旨
ミミズなどを食べることが多いが柿などの奨果も食べるトラツグミの舌は、細長い矢じり状で舌尖の先端は幾つもの針状構造を呈した。舌体の表面は平滑で舌体と舌根の境界部に円錐乳頭が見られ、舌根の表面には分泌腺の開口部が観察された。鳥類を主食とするハイタカの舌はヘラ状で先端は分離せず、舌尖の表面は一面落ち葉で敷き詰められた形状を呈した。舌体の表面は平滑で分泌腺の開口部が見られ、舌体と舌根の境界部に円錐乳頭が見られ、舌根の表面には分泌腺の開口部が観察された。水生動植物を食べるオナガガモでは舌尖は舌体から飛び出したヘラ状で、舌体前半分の外側は細かい刷毛様構造を呈し、舌体後半分の外側には爪状の突起が見られ、舌体と舌根の境界部に円錐乳頭が見られ、その中央部は舌根方向に突出していた。舌尖の表面は平滑で外側は非常に多数の細い糸状構造で舌体の外側は爪状を呈した。魚類やカエルなどを食べるチュウサギの舌は尖った針状構造で先端は分離せず、舌体の後端部分両外側はマント状となった。舌尖の表面は平滑で、マント状部分の内側に分泌腺の開口部が見られた。舌根中央部に前後に伸びる溝が観察され溝近くの左右に分泌腺の開口部が見られた。食性と舌表面の形態が密接に関係していることを示唆するものであった。